発音の思い出

道産子は、「椅子」の発音が、内地人と違うらしい。

中学生のころ、男の子たちが私に向かって、椅子を指さして、「これはなーんだ?答えてみろ」とよく言った。私に、「椅子」と発音させては、ゲラゲラと笑った。いなかっぺ、いなかっぺ、田舎クサい、ダサいやつ、と言われたものだ。

私はかなり真剣に考えた。「椅子」の発音が、みんなと違う、というのは、そんなに悪いことだろうかと。

出した結論は、悪くない、ということだった。私は何も悪くない。誰にも、後ろ指さされるようなことはしていない。だったら堂々としていよう。私が悪くないことで、くよくよ悩んでも、仕方ないじゃないか。椅子は、椅子だ。何が悪い。

もう気にしないのだと、誰に何と言われようと、気にしないのだと決めた。中学校2年生のころだった。

そう決めて以来、男の子たちは、私をあまりからかわなくなったように思う。私が私立の中学校に受かって転校するとき、最後に男の子たちが、からかってごめんな、と謝ってくれて、びっくりした。ふとしたことで、そんな昔のことを、ぼんやりと思い出した。

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